文化庁Living History「鳥羽伏見の戦い絵巻 超高精細デジタル化及び歴史発見コンテンツ製作 」レポート[1]
2020年09月29日
2020年9月24日木曜日、京都大学吉田キャンパスにある時計台記念ホールにて文化庁の令和2年度Living History事業に関わるキックオフミーティング「鳥羽伏見の戦い絵巻 超高精細デジタル化及び歴史発見コンテンツ製作」が開催されました。
「Living History(生きた歴史体感プログラム)促進事業」とは文化庁による国指定等文化財を核として,文化財の付加価値を高め,収益の増加等の好循環を創出するための取組を支援する事業で、世界文化遺産・仁和寺が所蔵している、鳥羽伏見の戦いを描いた「戊辰戦争絵巻」を核とした戊辰戦争の史実仮想再現の事業が今後予定されており、今回はプロジェクト公開に先立ち、現状報告及び専門家の方々の意見を聞く機会を設ける目的としてミニシンポジウムを開催させて頂きました。
当日のプログラムは下記の通り
■前半 13:00~15:00
1. (開会挨拶) 文化財とデジタル技術のお話 京都大学名誉教授・(一社)先端イメージング工学研究所代表理事 井手亜里
2. (事業説明) 文化庁 文化資源活用課 水野歌子、文化庁 地域文化創生本部 村上佳代
3. (講演) 総本山仁和寺 執行長 吉田正裕
4. (講演) 霊山歴史館副館長 木村幸比古
5. (講演) 城南宮宮司 鳥羽重宏
(休憩10分)
■後半 15:10~16:20
6. (講談) 旭堂南春(講談(一部)を英語で披露)
7. (発表) (一社)先端イメージング工学研究所調査員の現状報告
8. 閉会挨拶
井手教授は京都大学名誉教授であり、
京都大学在学時に先端イメージング工学研究室を設立し、文化財専用の超高精細に画像を記録する機械及びソフトウェアーを独自開発するとともに、開発した技術を応用して世界10か国以上の「文化財のデジタル化」に取り組んできました。
2018年3月の京都大学退官後は、一般社団法人 先端イメージング工学研究所を設立し、「芸術のための科学技術」に関する研究・制作活動を継続しております。
また続く文化庁 地域文化創生本部 広域文化観光・まちづくりグループ 文化財調査、村上佳代様は文化庁において、はじめての観光の専門職として、多言語化やユニークベニューなどの文化財の活用や観光に従事されており、
文化庁の方の挨拶の後は、いよいよ講演のスタートで、
まず最初は総本山仁和寺の執行長(しぎょうちょう)である吉田正裕(よしだしょうゆう)様に講演を賜りました
仁和寺は京都市右京区にある真言宗御室派の総本山で、ユネスコの世界文化遺産に指定されている京都でも有数の寺院の一つです
御室桜で有名な桜の名所であり、国宝の金堂や五重塔をはじめ数多くの指定文化財を所有されています
また今回のLivingHistory事業の題材となった戊辰戦争絵巻を所蔵されており、高精細デジタル化と歴史調査に全面的にご協力いただいており、
本日は仁和寺と絵巻に登場する仁和寺宮(にんなじのみや)様について講演を頂きました
タイトルは「鳥羽伏見の戦いと 仁和寺純仁法親王」です
続いて今回の「戊辰戦争絵巻」で主人公「仁和寺宮嘉彰親王」として登場する純仁法親王(じゅんにんほっしんのう)についての説明
伏見宮邦家親王の第8王子として生まれ、仁和寺に入寺して親王宣下を蒙り「純仁法親王」と号すとともに、仁和寺の第30世門跡に就任
当時、皇室や宮家の跡継ぎ以外の皇子の多くは寺に入る風習があり、その中でも仁和寺は皇族が入る門跡寺院の筆頭格であったそうです
慶応3年(1867年)12月9日、「王政復古の大号令」に伴って明治天皇を支えるために多くの皇子・王子が還俗して宮家の創設を許されましたが
純仁法親王も明治天皇から還俗を命じられて「仁和寺宮嘉彰親王」と称し、22歳の若さで新政府の閣僚である「議定」に任ぜられ、
更に翌年の「鳥羽伏見の戦い」においては、1月4日に天皇より征討大将軍・軍事総裁に任命されるとともに、錦の御旗と節刀を授けられ、「官軍」となった新政府軍の総大将として戦地に赴きました
その後、称号を「小松宮」名を「彰仁」に改め、日本赤十字社の初代総裁としてその発展に尽くした方でもあります