高精細デジタル技術と江戸時代の素晴らしい芸術

高精細デジタル技術と江戸時代の素晴らしい芸術

泉屋博古館 源氏物語図屏風

泉屋博古館(京都市)所蔵の住友コレクション「源氏物語図屏風」の画像。
17世紀中頃の制作とされ、保存状態が極めて良いことから、特に金箔などが鮮やかに残されている貴重な作品である。
芸術的に美しいだけではなく、描かれた時代に使われた顔料のデータ収集と分析などの科学的研究にも役立ち、また描かれている平安時代の生活の一端を垣間見ることができることから、歴史民俗学的に大変貴重である。

図柄は源氏物語の一場面。源氏物語は紫式部が11世紀初頭に書いた日本最古の小説であり平安時代の優雅な貴族社会を描いたもの。
日本文化の伝承手段としての屏風や絵巻物は、後世に日本の古典や伝統文化を伝え続け、現代文明への発展の礎となっている。
この屏風が制作された江戸時代前期は、まさに元禄文化最盛期で、日本の歴史の集大成とも言える伝承文化が見事に花開いた時代である。
絵画鑑賞や文学を読むことが一部の階級の人たちの間だけだったものが、この時代に一般の人々の間で一気に広まった。
日本の伝統文化が広く大衆の人々の心の中で美しく開花し、日本の芸術と精神性が最も成熟した時代である。制作された時代背景もまた興味深い。

泉屋博古館 源氏物語図屏風

早稲田大学坪内記念博物館 女歌舞伎図屏風

京都大学井手研究室と早稲田大学坪内記念博物館との共同プロジェクトにより撮影された超高精細画像。

図柄は女歌舞伎。題材となっている女歌舞伎とは、歌舞伎のルーツであり、もともと女性により演じられていたが、後に演者は男性と限定されるようになり現在に至る。
発祥は出雲阿国という女性が、約400年前に河原町四条で興行した舞台芸術。それまでの能や狂言と言った伝統的舞台芸能と違い、民衆の娯楽芸能として発祥したものであり、古典的な能楽と違い、舞踏を取り入れ派手でエンターテインメントの要素が強いことから、民衆の間で人気を博した。
その後廃止されることになり、その歴史は途絶えてしまったが、日本の、ひいてはアジアにおける大衆演劇の先駆けとして、女性により生み出された江戸時代の、自由闊達とした風潮は、果たしてどのようなものだったのか。
その一場面を切り取った屏風絵を超高精細で撮影し、絵師が残した一筆一筆をミクロの単位まで正確に写し取った。
江戸時代前期の大衆文化花盛り、性別や階級を超え、日本文化が湧き立った瞬間を、マイクロスコピックに捉えた。
超高精細画像記録は、芸術作品を鑑賞、研究するための、最先端科学技術の有効な活用方法の一つであるだろう。

早稲田大学坪内記念博物館 女歌舞伎図屏風

東京国立博物館 宇治橋図屏風

東京国立博物館との共同プロジェクトにより撮影した超高精細画像。

長谷川等伯を筆頭とし,桃山時代を中心に活躍した絵師集団、長谷川派が桃山時代から江戸時代にかけて描いた一連の「柳橋水車図屏風」(宇治橋図屏風)のうち東京国立博物館所蔵の作品。
長谷川派作品の特徴として、絵の具を盛り上げる技法が使われることがあり,そのような半立体の効果など作品の技法を詳細に検証することに貢献した。
約400年前の作品と推定されるが、金の扱いが目を引き、当時の絵師の技術の高さが際立つ。

RGB撮影、マルチスペクトル撮影および偏光撮影といった3つの手法で撮影し、肉眼やRGBでは捉えにくい対象の特性や情報を収集し、金箔など表面反射の特性を持つ表面情報も取得した。

東京国立博物館 宇治橋図屏風

泉屋博古館 二条城行幸図屏風

泉屋博古館(京都市)所蔵の住友コレクション「二条城行幸図屏風」の画像。

1626年、上洛中の徳川秀忠、家光の招きに応じ、後水尾天皇が二条城に行幸する様子を描いたものである。
約350年前の作品と推定されるが、保存状態が極めて良い。金地に上質の顔料をふんだんに使い、約4500点の人馬が描きこまれている。
天皇の一行、迎える武家衆、沿道にはおびただしい数の観衆の群れ、その歓喜と喧騒、豪華絢爛なパレードの様子が緻密に、生き生きと表現されている。
よく観察すると、観衆の中には様々な階級の人々がいて、それ相応の装いと振る舞いをしている。
衣服、しぐさ、食文化、建築様式など当時の衣食住がそのまま描かれていることから、歴史民俗学的資料としても大変貴重なものである。

超高精細画像は肉眼では見えない、あるいは見えにくい部分まで明らかにすることができ、絵師の技法や使用した顔料まで分析することができる。
この屏風は当時の将軍の権威を表現するためか、贅を尽くし描きこまれたことが良くわかる。
作者不明のこの作品の研究が、我々の開発した超高精細スキャンと顔料分析システムを通して、今後さらに進むことを期待している。

泉屋博古館 二条城行幸図屏風

TOP