平成30年度 文化財多言語解説整備事業(京都府プロジェクト)
2022年08月26日
事業者:一般社団法人先端イメージング工学研究所
2.対象文化財
3.実施期間
4.整備手法
4-1 仁和寺
4-2 聚光院
5.成果物一覧
6.コンテンツ紹介
6-1 多言語案内看板の設置(仁和寺)
6-2 VRコンテンツの整備(仁和寺)
6-3 多言語対応インフォカードの設置(聚光院)
1. 事業内容・事業目的
京都の寺社の多くは長い歴史と伝統を有し、重要文化財、国宝など指定文化財、指定庭園などが多数ある。見所も多く、毎年世界中から多くの外国人観光客が訪れる。本プロジェクトは、このような京都の伝統文化の魅力を、最新のデジタル技術を用いて整備加工し、外国人観光客向けに多言語化することで、より多くの人を楽しませることを目的に始まった。キーワードは、「デジタル技術」と「多言語化」である。
デジタル技術は文化財の魅力を発信する上で大きな力を発揮する。先進的、高次元的なデジタル技術を用いることで、仮想空間を作り出すことができるためだ。国宝や重要文化財などの貴重な指定文化財や非公開の建造物は、通常、容易に入場したり見学することができない場合が多い。しかし、デジタル技術を用いることで、これらの文化財をバーチャル体験できるようになるのである。
さらに、こうしたコンテンツを多言語で提供することで、臨場感を持って日本文化に触れる機会を創出し、外国人観光客に日本の伝統文化と先進技術の融合の素晴らしさを体験してもらうことができる。
このプロジェクトを通して、文化財デジタル活用の基盤を造り、地域振興のためのデジタルネットワークを構築することを目指す。伝統と最先端技術が融合する洗練された京都らしいおもてなしを、多言語対応で整備していく。
2. 対象文化財
総本山 仁和寺
所在地:京都府京都市右京区御室大内33番地
文化財種別 | 指定等文化財の名称 |
---|---|
重要文化財 重要文化財 国宝 史跡 |
観音堂 五重塔 金堂 御室八十八ヶ所霊場 |
大徳寺 聚光院
所在地:京都府京都市北区紫野大徳寺町58番地
文化財種別 | 指定等文化財の名称 |
---|---|
国宝 重要文化財 |
障壁画 茶室 |
3. 実施期間
2018年(平成30年)11月1日~2019年(平成31年)3月31日
4. 整備手法
4-1 仁和寺
調査:文化財所有者との打ち合わせ、現地視察
撮影:3次元計測、空撮、360度撮影、4K撮影、高精細スキャナ撮影
コンテンツ制作・多言語化:文化財解説動画、建物内部VR、AR、高精細画面表示システム
整備:QRコード、多言語案内看板、動画・VRコンテンツリンク
4-2 聚光院
調査:文化財所有者との打ち合わせ、現地視察
撮影:3次元計測、高精細スキャナ撮影
コンテンツ制作・多言語化:文化財解説動画、建物内部VR、高精細閲覧システム
整備:専用タブレット
5. 成果物一覧
6. コンテンツ紹介
6-1 多言語案内看板の設置(仁和寺)
今回、日本語・英語・中国語・韓国語で文化財の説明文を作成した。新看板は和柄の挿絵を入れ、日本らしさをアピールした。モチーフには日本の文化と四季折々の季節感を感じさせるものを選び、和の雰囲気を感じられる看板に仕上げた。
説明文は文化財所有者および専門家の監修を経て完成した。外国語翻訳は各言語に複数のネイティブのチェックのあと、外国語監修を受けた。
また、国宝の金堂、重要文化財の観音堂、五重塔、経蔵については、VRコンテンツやビデオクリップを呼び出して閲覧できるようにQRコードを作成し、案内看板に掲載した。
看板は脱着可能にすることで、情報の更新に対応できるようになっている。
仁和寺は御室八十八か所参りで知られる。これは江戸時代までさかのぼる。当時、四国巡礼が困難な人のために、四国88か所の土を集めて京都に持ち帰り、その土の上に小さな社が88社建てられた。仁和寺の裏手の成就山に点在するこれらのお堂は2時間ほどで一巡することができ、四国の本山を巡礼したのと同じご利益があるとされる。
本プロジェクトでは、最新のMR技術で、現代版「お砂ふみ」を体験できるようにした。仁和寺の霊場にあるQRコードを読み込むことで、四国の霊場の臨場感あふれる美しい映像を楽しむことができる。それだけではなく、寺の建造物と周りの自然や景観、迫力あるドローン映像、360度ビューのVRツアー映像も見ることができる。
いずれも多言語で解説されている。
6-2 VRコンテンツの整備(仁和寺)
デジタル技術の大きな強みは、仮想空間を作り出すことができるということである。この特徴を利用し、本プロジェクトでは通常公開されていないような箇所も360度撮影を行った。仁和寺の五重塔の内部が一つの例だ。五重塔は400年近く倒れることもなく、立ち続けている。この強さは構造に理由があることが分かっている。
そこで、今回は特別公開でも見ることのできない屋根裏に至るまで撮影を行い、来場者がVRでじっくり観察できるようにした。
6-3 多言語対応インフォカードの設置(聚光院)
聚光院には、通常は非公開となっている方丈や茶室がある。定期的な茶会と、特別公開の期間だけ公開されるのである。これをVRコンテンツにすることで、聚光院の内部を満喫できるようにした。本プロジェクトでは、手に取れるインフォカードを設置した。サイズは名刺サイズ、ポストカード仕様も作成した。
同コンテンツは、聚光院内に設置するタブレットにもデータを入れておき、来客時の案内や、スマホを持たない世代の人たちに対しても、多言語情報提供を行うことができるようにした。このコンテンツの中では、3Dで非公開の方丈や茶室を訪れることができる。詳しい文化財情報はテキストデータやムービーで、多言語解説を受けることができる。